2026/8/22 鳥海山

千蛇谷分岐から後ろを振り返ると絶景
鳥海山の山頂にて

メンバー:古川

スケジュール
5:00鉾立登山口ー8:05新山ー8:30七高山ー9:10伏拝岳ー11:00鉾立登山口着ー11:40駐車場発ー19:20船橋着

山行記録
前日の21時頃、鉾立駐車場に到着。駐車場はすでに15台ほど埋まっていた。トイレは24時間利用可能で、車中泊にはありがたい環境である。

翌朝4時に起床。トイレ前の駐車場はすでに満車となっており、さすがは東北を代表する名峰。週末ともなると、朝4時から登山者が動き始めている。熊鈴を鳴らしながら歩き出す人の姿もあり、「山頂が混み始める前に出発しなければ」と少々焦る。……が、そこは急がない。しっかり朝食を済ませ、洗顔、歯磨きまで済ませてから出発。早起きした意味があるのかないのか、我ながらマイペースである。

5時頃、ようやく歩き始める。空は朝焼けに染まり、オレンジ色の光が山肌を淡く照らしている。日が高くなり、暑さが本格化する前に少しでも先へ進みたい。

今回の装備で密かに楽しみにしていたのが、前日にモンベルで購入したアームカバーである。これまではTシャツの下に長袖のアンダーウェアを着用していたが、暑くなるとどうしても蒸し暑さが気になる。そこで今回はアームカバーを導入してみた。

結果は大正解。

腕の日焼けを防ぎながら、暑くなれば簡単に調整できる。何より長袖のアンダーウェアより格段に涼しい。「なぜ今まで使わなかったのか」と思うほど快適で、夏山歩きの新たなスタメンに即決。アームカバー、恐るべし。

歩き始めて間もなく、高木がほとんどなく、開けた景色が広がる。東北の山らしく森林限界が低いため、登山口からすでに広大な草原が展開している。さらに登山口から御浜小屋までは石畳が整備されており、非常に歩きやすい。

御浜小屋まで上がると鳥海湖が姿を現す。この時点では生憎の曇天で、青空を鏡のように映す湖面とはいかなかったものの、草原の中に静かに佇む湖は十分に美しい。天気が良ければさらに素晴らしい景観になるのだろう。

千蛇谷分岐からは左手の千蛇谷へ下る。ここからは斜度が増し、丸太が縦方向に設置された箇所では、一歩ごとに足の置き場を考えながら慎重に下っていく。途中には雪渓のトラバースもあったが、斜度は緩く、チェーンスパイクを使うほどではなかった。このあたりから青空がでてくる。

山頂直下にある鳥海山大物忌神社に立ち寄り参拝。ここでは綺麗な青色のお守りを授かる。なんとこれで2日連続のお守り。山に登っているのか、お守りを集めに来ているのか、少々分からなくなってきた。

神社の下には鳥海山頂美術館があり、鳥海山を題材にした写真が展示されていた。山頂直下でこうした展示を楽しめるのも面白い。

神社を過ぎると、それまでの穏やかな草原歩きから一転、登山道の雰囲気が一気に変わる。荒々しい岩稜帯が現れ、まるで穂高連峰を思わせるような険しい景観となる。ただし、岩の色は穂高の黒々とした岩肌とは異なり、やや白みを帯びているため荒々しさの中にもどこか気品があり、鳥海山独特の美しさを感じる。

岩には白ペンキで矢印や丸印が記されており、それを頼りに山頂へ向かう。山頂は非常に狭いが、早めに到着したこともあり先客は一名のみ。お互いに写真を撮り合い、混雑する前に早々と七高山へ向かう。

山頂付近の岩には、
「世界人類が平和でありますように」
「May peace prevail on Earth」
という言葉がペンキで記されている。標高2,000mを超える山で、世界平和を願う言葉を見ると、なかなか感慨深いものがある。

そして今回、最も神経を使ったのが新山から七高山へ向かう途中の急斜面のザレ場だった。浮石が非常に多く、一歩間違えれば落石につながる。しかも下には登山者がいるため、足を置く場所を慎重に選びながら、一歩一歩、石を動かさないように登っていく。

ありがたいことに、下る登山者はこちらが通過するまで待っていてくれた。

「譲り合いの精神」である。

山頂で見た「世界人類が平和でありますように」という言葉を思い出す。山では、道を譲るという小さな行動が安全につながり、ひいては山全体の雰囲気を穏やかにする。世界平和も、まずはこういうところから始まるのかもしれない。

……などと少々大げさなことを考えながら七高山へ。

七高山からは、行者岳、伏拝岳、文殊岳を経由して下山する。この頃になると次第にガスが湧き始め、山頂付近はすっかり雲の中へ。早めに登頂しておいて正解だった。

下山中は、これから登ってくる登山者と頻繁にすれ違う。狭い登山道では、互いに道を譲りながら「どうぞ、どうぞ」と声を掛け合う。ここでもまた、譲り合い。山で交わされる「どうぞどうぞ」の連鎖を見ていると、日常生活でもこれくらい譲り合いがあれば、世の中はもう少し平和になるのではないかと思う。

世界平和を願う言葉を山頂で見て、登山道では実際に人同士が譲り合っている。やっぱり登山は素晴らしい。

下山後は鉾立ビジターセンターへ立ち寄り、鳥海山の自然や地形の成り立ちについて学ぶ。登って終わりではなく、その山がどのようにして今の姿になったのかを知ることで、山を見る目も少し変わる。

そして帰路へ。最後に待っていたのは、東北道・館林ICから浦和ICまでの渋滞。山では軽快に歩けたのに、下界では車が進まない。結局、7時間以上をかけて帰葉。

鳥海山では自然の雄大さと人の温かさに触れ、最後は渋滞という現代社会の洗礼までしっかり受けることとなった。山では譲り合い、道路では……なかなか譲ってもらえない。それもまた、山行の締めくくりとしては妙に味わい深い一日だった。

古川孝至